競馬の「トモ」とは何?重要な役割や見方を幅広く調査!

競馬中継のパドック解説や、専門紙の厩舎コメントなどで頻繁に耳にする「トモ」という言葉。競馬初心者の方にとっては、具体的に馬の体のどの部分を指すのか、あるいはなぜそこまで重要視されるのか、疑問に思うことも多いのではないでしょうか。競走馬の体には多くの専門用語が使われますが、その中でも「トモ」は、馬の能力や調子を見極める上で最も重要な部位の一つと言っても過言ではありません。

この記事では、競馬における「トモ」の正確な意味や場所、競走馬としての能力に与える影響、そしてパドックで良いトモを見分けるためのポイントまで、徹底的に解説します。トモの状態を正しく理解することは、馬券予想の精度向上に直結するだけでなく、サラブレッドというアスリートの肉体美をより深く味わうための第一歩となります。基礎知識から応用的な見方までを網羅し、現代競馬におけるトモの重要性を明らかにしていきます。

競馬の「トモ」とは具体的にどこ?構造や役割を深掘り

まず初めに、トモの基本的な定義とその機能について詳しく見ていきましょう。トモとは、単なる「お尻」のことだけを指すのではありません。その構造を理解することで、なぜ競走馬にとってエンジンと呼ばれるのかが分かります。

トモの場所と名称:後肢の筋肉群を指す専門用語

競馬用語における「トモ」とは、馬の後躯(こうく)、つまり後ろ足の太ももからお尻にかけての筋肉群全体を指す言葉です。具体的には、腰角(こしかど)から臀部(でんぶ)、大腿部(だいたいぶ)、そして飛節(ひせつ)の上あたりまでの領域を含みます。人間で言えば、お尻の筋肉(大殿筋など)から太ももの筋肉(ハムストリングスや大腿四頭筋など)に相当する部分です。

解剖学的な観点から見ると、ここには「中殿筋」「大腿二頭筋」「半腱様筋」といった、巨大かつ強力な筋肉が密集しています。これらの筋肉が発達しているかどうかが、馬体のシルエットを決定づけます。一般的に「トモが実が入っている」や「トモが寂しい」という表現が使われますが、これはこの部分の筋肉量や張り具合を指しています。サラブレッドの美しい流線型のボディラインの中で、最も力強く隆起している部分がトモであり、まさにパワーの源泉となる場所なのです。

エンジンとしての役割:推進力を生み出すメカニズム

なぜトモがこれほどまでに重要視されるのでしょうか。それは、競走馬が走るための推進力(ドライブ)のほとんどが、このトモから生み出されているからです。四足歩行の動物である馬は、前足で地面をかいて進むのではなく、後ろ足で地面を強く蹴り上げ、その反発力で体を前方へと押し出す「後輪駆動」のメカニズムで走っています。自動車に例えるなら、トモはまさに「エンジン」そのものであり、前足は方向舵や衝撃吸収の役割を担うタイヤやサスペンションに近い役割を果たします。

スタートの瞬間の爆発的なダッシュ力、直線の坂道を駆け上がる登坂力、そしてゴール前で他馬を突き放す瞬発力。これらはすべて、トモの筋肉が収縮し、強力なパワーで地面を蹴ることで生まれます。したがって、トモの筋肉が貧弱であれば、どれだけ心肺機能が高くてもスピードに乗ることができず、レースで勝ち負けに加わることは難しくなります。逆に、発達した強靭なトモを持つ馬は、一歩ごとのストライドが大きく力強くなり、高い競走能力を発揮する素地を持っていると言えるのです。

距離適性との関係:スプリンターとステイヤーの違い

トモの形状や筋肉の質は、その馬が得意とする距離(距離適性)とも密接に関係しています。一般的に、短距離を得意とする「スプリンター」やダート馬は、丸みを帯びたボリューミーなトモをしている傾向があります。これは、瞬発力を生み出す「速筋繊維」が多いため、筋肉が太く大きく発達しやすいからです。お尻が横に大きく張り出し、後ろから見た時に四角く見えるような馬は、短時間で爆発的なパワーを出すことに長けています。

一方で、長距離を得意とする「ステイヤー」は、筋肉量はありつつも、すっきりとした縦長の形状をしたトモをしていることが多いです。これは、持久力に優れた「遅筋繊維」の割合が比較的高く、無駄な脂肪や過度な筋肉の重さを削ぎ落とした体型になっているためです。もちろん例外はありますが、トモの形を見ることで、その馬がパワータイプなのか、それともスタミナタイプなのかをある程度推測することが可能です。適性を見極める上でも、トモの観察は欠かせない要素となります。

「トモが甘い」とは:成長途上の若駒によくある課題

競馬新聞や調教コメントを見ていると、「まだトモが甘い」「トモが緩い」という表現をよく目にするはずです。これは、トモの筋肉がまだ十分に発達しておらず、力が付ききっていない状態を指します。特に2歳や3歳の若い馬(若駒)によく見られる課題です。

トモが甘いと、スタートで行き脚がつかなかったり(出遅れや二の脚が遅い)、勝負所で騎手が合図を送っても反応が鈍かったりします。また、トモの踏ん張りが利かないため、坂道でバランスを崩したり失速したりすることもあります。パドックで歩いている時に、後ろ足の運びがフラフラしていたり、踏み込みが浅かったりする場合も「トモが甘い」と判断される要因となります。

しかし、これは決してネガティブなだけの要素ではありません。「トモが甘い」ということは、裏を返せば「これからの成長余地(伸びしろ)が大きい」ということでもあります。調教を重ねてトモに実が入ってくれば、見違えるような走りをすることもあります。そのため、長期的な視点で馬を評価するPOG(ペーパーオーナーゲーム)や一口馬主などの分野では、「現状は甘いが、フレームが良いのでトモがパンとすれば化ける」といった評価がなされることも多々あります。

良い「トモ」とはどのような状態?パドックでの見極め方

トモの構造と重要性を理解したところで、次は実践編です。実際に競馬場や映像でパドックを見る際、どのようなトモを「良いトモ」と判断すればよいのでしょうか。プロの相馬眼を持つ人々が注目しているポイントは、主に「ボリューム」「形」「動き」の3点に集約されます。ここでは、馬券検討に役立つ具体的な見極め方を解説します。

ボリュームと張り:筋肉の盛り上がりと陰影をチェック

良いトモの第一条件は、やはり筋肉の「ボリューム」と「張り」です。パドックで馬を横から、あるいは後ろから見た時に、皮膚の下から筋肉が盛り上がり、はち切れんばかりの迫力を感じさせる馬は好調である可能性が高いです。

具体的には、以下のポイントに注目してください。

まず、お尻の半球状の筋肉に「厚み」があるかどうか。薄っぺらいお尻ではなく、丸太のような太さを感じさせるものが理想です。次に、皮膚の「薄さ」と「光沢」です。調教が十分に行き届き、余分な脂肪が燃焼されている馬は、皮膚が薄く見え、筋肉の繊維や血管が浮き出て見えます。太陽の光を反射してピカピカと輝き、筋肉の溝(スリット)がくっきりと影を作っている状態は、最高の仕上がり(メイチ)であることを示唆しています。

逆に、トモ全体がぼんやりとしていてメリハリがない、あるいは皮膚が分厚くボテッとしている場合は、太め残りであるか、筋肉量が不足している可能性があります。また、レース間隔が空いた休み明けの馬などで、トモの筋肉が落ちて小さく見える(萎んでいる)場合は、本調子に戻るまで時間がかかるかもしれません。

形とバランス:四角いトモと容量の大きさを観察する

筋肉の量だけでなく、その付き方や全体のシルエットも重要です。特にダート戦や短距離戦においては、「四角いトモ」が良いとされることがあります。これは後ろから見た時に、お尻の幅が広く、上部から下部まで筋肉がぎっしりと詰まっており、長方形に近い形に見える状態を指します。このような形状は、強大なパワーの証明であり、ダートの深い砂を掻き分ける推進力を持っている証拠です。

また、横から見た時の「容量」にも注目しましょう。腰から飛節までの距離が長く、面積が広いトモは、それだけ多くの筋肉が付着できる骨格を持っていることを意味します。これを「トモの容量が大きい」と表現します。容量が大きい馬は、一完歩ごとのエネルギー出力が大きいため、長く良い脚を使える傾向があります。

ただし、単に大きければ良いというわけではありません。馬体全体との「バランス」が極めて重要です。前駆(肩まわり)の発達具合と比較して、トモだけが異常に大きすぎると、前のめりのバランスになりがつんのめって走る原因になりますし、逆にトモが小さすぎると推進力不足になります。前後の筋肉が均整のとれたバランスで付いている馬こそが、最も効率よく走れる理想的な馬体です。

歩様と踏み込み:可動域の広さと力強さを確認する

静止画のような形状確認だけでなく、動いている時の様子(歩様)を見ることで、トモの質をより深く理解できます。ここでキーワードとなるのが「踏み込み」です。

パドックを周回する際、後ろ足が地面に着地する位置に注目してください。後ろ足が、前足の蹄跡(ていせき:足跡のこと)よりも前方に着地している場合、「踏み込みが深い」と言われます。踏み込みが深いということは、股関節や筋肉の柔軟性が高く、可動域が広いことを示しており、レースでも大きなストライドで走れる可能性が高いです。

さらに、着地した後の動作も重要です。地面を捉えた後ろ足が、しっかりと体重を支え、力強く地面を蹴り出しているかを見ます。良いトモを持つ馬は、後ろ足の運びがスムーズでバネがあり、歩くたびにお尻の筋肉がプルプルと躍動します。一方で、トモが甘い馬や疲労が溜まっている馬は、踏み込みが浅く(前足の跡より後ろに着地する)、足を引きずるように歩いたり、トモの送りが硬くぎこちなく見えたりします。

このように、筋肉の「見た目」と、実際に動かした時の「機能性」の両方をチェックすることで、その日の馬のコンディションや、秘められた能力をより正確に見抜くことができるようになります。トモは嘘をつきません。パドックではぜひ、馬の顔だけでなく、この「エンジンの状態」に熱視線を送ってみてください。

競馬のトモとは何かについてのまとめ

競馬のトモとは何かについてのまとめ

今回は競馬のトモとは何かについてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。

・トモとは馬の後躯全体を指し腰角から臀部や大腿部にかけての筋肉群のことである

・競走馬の推進力の源であり自動車で例えるならエンジンに相当する重要な部位である

・スタートのダッシュ力や坂道を駆け上がるパワーはトモの筋肉量によって決まる

・スプリンターは速筋が発達し丸みを帯びたボリュームのあるトモをしている傾向がある

・ステイヤーは持久力に優れた遅筋が多くすっきりとした縦長のトモをしていることが多い

・「トモが甘い」とは筋肉が未発達で力が付ききっていない若駒によくある状態である

・トモが甘いとスタートでの二の脚が遅かったり勝負所で反応できなかったりする

・パドックではトモの筋肉の盛り上がりや皮膚の薄さと血管の浮き具合を確認する

・良いトモは筋肉の溝がくっきりと見え太陽光を反射するような張りや光沢がある

・後ろから見て幅が広く四角く見えるトモはダートや短距離で求められるパワーの証である

・横から見た時に面積が広く容量の大きなトモは多くの筋肉が付着できる優れた骨格である

・前駆とのバランスが取れていることが重要でありトモだけが大きくても効率よく走れない

・踏み込みが深く前足の跡より前に後ろ足が着地する馬は柔軟性と可動域が優れている

・歩くたびに筋肉が躍動しバネを感じさせる歩様はトモの状態が絶好調であるサインである

・トモの状態を観察することで馬の適性や当日のコンディションを正確に見極められる

以上、競馬における「トモ」の定義から、その役割、そして実践的な見方までを詳しく解説しました。

トモは競走馬の能力を推し量る上で、最も正直で雄弁なパーツの一つです。

ぜひ次回のレース予想では、出走馬のトモに注目し、その馬が秘めるエンジンの性能をご自身の目で確かめてみてください。